【美術館散歩】田畑精一 おしいれのぼうけん展 @ちひろ美術館

今日はちひろ美術館・東京で開催されています「没後1年 田畑精一おしいれのぼうけん展」をご紹介します。

目次

絵本・おしいれのぼうけん

おしいれのぼうけんは1974年に刊行された絵本で、2021年までの47年間にわたりずっと販売を続けてきたロングセラーです。

発行数は232万部とのことですので、絵本の単行本の販売数では25位です。ちなみに第1位は松谷みよこ作、瀬川康夫画の「いないいないばあ」で約700万部、第2位はおなじみ「ぐりとぐら」約530万部です!

ベストセラーと呼ばれている絵本はかわいく微笑ましい感じの絵や話が多いのですが、「おしいれのぼうけん」はちょっと違います。

保育園でのリアルなエピソードが元になった

保育園という日常で、押入れの暗い空間で起きたおもしろい体験が、鉛筆画を中心にしたモノトーンの画面に描かれています。

作者の古田足日(ふるたたるひ)さんと画家の田畑精一さんは保育園で生活する子どもたちのリアルな姿をとらえようと、東京都東久留米市と保谷市(現在の西東京市)で実際の保育園を取材して、その時に聞いた実際のエピソードが元になっているということで、この絵本が他の絵本とは少し違う理由はここにあります。

今や保育園はきれいで清潔で子どもを押入れにいれるなんてありえないのですが、1970年代はごく普通の様子でした。そして、子どもたちは押入れという小さい空間にもぐりこむことが大好きでした。

このお話では、先生に怒られた子どもがお仕置きとして押入れに入れられるので、最初のうちは楽しい空間ではなかったのですが・・・

私は西東京市のとなりの市の保育園に、ほぼ同時期に通園していたので、まさにこの「おしいれのぼうけん」の世界を体験しています。

午後に一斉のおひるねという時間があり、年長(小学校に上がる1つ前)になると、もう眠くないのですが、とにかく目を閉じていなければならなかったので色々な空想をしていました。

私の想像では子どもたちの空想からこのお話ができたのかなと思います。

展覧会の会場に本が置いていりますのでぜひ見てみてください。

原画の展示がありましたが、絵本とほぼ同サイズで描かれているものが多かったです。

会場では実際の絵本と見比べることができます。

また階段の吹き抜けを利用して、登場する強烈なキャラクター「ねずみばあさん」と記念撮影できるコーナーもあります。

田畑精一さんについて

1931年大阪府生まれ。京都大学に入学後に人形劇に興味を持ち、中退後は人形劇団プークに参加、その後10年間は人形座に参加し美術を担当する。その後住まいとしていた東久留米市にて古田足日と出会い、子どもの本の仕事を始める。主な作品に『おしいれのぼうけん』『ダンプえんちょうやっつけた』『ゆうちゃんのゆうは?』『ひみつ』などのロングセラーがある。「日・中・韓平和絵本プロジェクト」の呼びかけ人のひとり。2020年6月7日逝去。享年89歳

​古田足日(ふるたたるひ)さんについて

1927年愛媛県生まれ。早稲田大学では早大童話会に入り、在学中より自動文学評論を発表。1959年に評論集『現代自動文学論』を出版、生涯にわたり評論活動を続ける。児童文学として『ロボット・カミイ』『大きい1年生と小さな年生』など。田畑精一との共作に『おしいれのぼうけん』『ダンプえんちょうやっつけた』『くいしんぼうのロボット』『へび山のあい子』などがある。

同時開催 ピエゾグラフで見る窓際のトットちゃん

今回の「没後1年 田畑精一おしいれのぼうけん展」と同時開催で黒柳徹子さん作でいわさきちひろさんの絵が挿絵として採用された『窓際のトットちゃん』の展示もありました。

ピエゾグラフとは耐光性のある微小インクドットによる画像表現のことです。

いわさきちひろさんの作品は多くは水彩画であるため、展示条件が限られていました。ピエゾグラフによる表現で、海外での展示も可能になるなど、世界中の人がいわさきちひろさんの実際の絵に近い作品を見ることが可能になりました。

『窓際のトットちゃん』が発刊されたのは1981年ですのでいわさきちひろさんの没後になります。黒柳徹子さんはちひろ美術館の館長もされているほど、いわさきちひろさんとつながりのある方です。

窓際のトットちゃんは発刊当時に読みました。トモエ学園に通うトットちゃんの様子が描かれ、黒柳徹子さんの人柄は、個性を尊重する小学校の環境が原点だったのだと、とても楽しく読みました。

そして、いわさきちひろさんの挿絵がとても合っていてすてきだなと思っていました。

その『窓際のトットちゃん』の挿絵の原画が物語の言葉と一緒に展示されています。

ちひろ美術館は東京のほか長野県安曇野にもありますが、そこには『窓際のトットちゃん』の世界を再現した「トットちゃん広場」があるそうです。楽しそうです!

ちひろ美術館・東京について

ちひろ美術館ではいつでもいわさきちひろさんのやさしい水彩画に会うことができます。

子どもたちのためにある美術館だと思います。

いわさきちひろさんの挿絵がある絵本が読めるライブラリーや、小さな子どもがくつを脱いで絵本を読める部屋など、

子どもが一緒はもちろんのこと、私のようにひとりで訪れてもゆっくり過ごすことができます。

意外と知られていないのが、高校生以下は無料なこと。

中学生や高校生のみなさんが、なにかのきっかけでひとりになった時に、ちひろ美術館にふらっと立ち寄ってほしいなと思います。

子どもの頃に見た絵本はきっと心にほっとする時間をくれると思います。

館内はほどよく日が入り、「ちひろの庭」と名付けられた中庭にきれいな花が咲いています。

カフェはパックの飲み物と焼き菓子を販売していてひだまりの庭を見ながら休むスペースです。

ミュージアムショップ

帰りにはミュージアムショップに寄りました。

いわさきちひろさんの絵のポストカードや本、他の絵本作家のグッズもあり品数豊富です。

設計は内藤廣氏

ちひろ美術館に行くまで設計した人のことを知らずに行きました。ですが、住宅街を抜けて美術館が見えたとき、

中に入り何個かに分かれている展示室や階段の様子を見て、これは建築家の作品だな、と思いました。

受付の方に聞いたところ、内藤廣さんの設計と教てくれました。

内藤廣さんは日本でも有数の建築家で数多くの美術館建築を手がけられています。

ちひろ美術館・東京 基本情報

  • 住所:〒177-0042 東京都練馬区下石神井4-7-2
  • 電話番号:03-3995-3001
  • アクセス:西武新宿線上井草駅 より徒歩 7分、JR中央線荻窪駅よりバスあり
  • オープン時間:10:00〜16:00(2021年は短縮対応)
  • 休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)
  • 料金:大人1,000円、高校生以下無料
  • 一般向け駐車場:3台あります。平日は停めやすいと思いますが、週末は埋まることが予想されます。
  • ロッカー:コイン式(100円硬貨お持ちください)
  • 写真撮影:特別展は禁止、撮影コーナーあり
没後1年 田畑精一 おしいれのぼうけん展:2021年3月16日(火)〜6月13日(日)

上記はブログ更新日現在の情報です。最新情報はウェブサイト等でご確認ください。

ちひろ美術館・東京ウェブサイト https://chihiro.jp/

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