今日は東京都庭園美術館での照明器具がとても素敵でしたのでご案内します。
アール・デコの館の照明器具
東京都庭園美術館は、建物そのものが美術品とも言える貴重な建築で、年に1回、建物や内装が当時の様子と共に公開されます。アールデコの館と呼ばれる朝香宮邸には各部屋ごとに異なったデザインの照明器具があり、訪れる人の目を楽しませてくれます。
玄関のルネ・ラリックのガラスレリーフ
ルネ・ラリックのガラスレリーフは照明器具ではありませんが、室内からの明かりであたかも照明器具のように見えます。
朝香宮邸の第一印象となる素敵な玄関です。玄関ポーチの天井にはペンダント照明があります。
朝香宮邸の照明器具は一部のパブリックスペースを除いてすべてが違うデザインです。オリジナルの照明器具の設計は、宮内省内匠寮の技手、水谷正雄氏です。この玄関ポーチの照明器具は東洋的なイメージも感じられ、水谷正雄氏のデザインです。そして、居室エリアの個性的な照明器具は「みんなで写真やカタログを見てデザインを決めた」と、書籍『旧朝香宮物語』のインタヴューで朝香宮鳩彦殿下第二女子の大前湛子氏が語っています。
1階 パブリックスペースの華やかな照明器具
大広間の照明器具
玄関を入ると大広間があります。ホテルではロビーのような空間です。照明は直線と円の組み合わせはアールデコのモチーフです。
大客室の照明器具
大広間の左手には大客室があります。
この部屋のトータルデザインを担当したのがアンリ・ラパンですが、この照明はルネ・ラリックのデザイン『ブカレスト』です。
大食堂の照明器具
大客室の奥にある大食堂の照明は、思わず「かわいい!」とつぶやいてしまうフルーツ柄のガラス照明はルネ・ラリックのデザインでタイトルはフルーツそのままの『パイナップルとザクロ』です。
この食堂、装飾の要素がとても多い部屋です。
窓から見える庭の景色と合わせて1枚の絵画のようですね。
ルネ・ラリックのシャンデリア『ブカレスト』と大食堂の『パイナップルとザクロ』は当時のカタログに1928年から1932年まで掲載があります。このことからこの2室の照明器具はオリジナルではなく、内装を担当したアンリ・ラパンがコーディネートしたものと想像します。
小食堂の照明器具
大食堂の他に小食堂という、家族だけで食事する際に使われた部屋があります。
こちらはフリンジがついたようなデザインでユニークです。
2階 パブリックスペースのユニークな照明器具
1階の大広間と2階の居室をつなぐのが階段です。階段を上がったところにオブジェのような照明があります。
2階のホールは家族でのだんらん用とのことで、当時の優雅な暮らしぶりを彷彿させます。
2階 居室の個性豊かな照明器具
朝香宮家の家族構成はご夫妻と若宮、姫宮各2人の4人のお子様、合計6人家族で装飾を施された表側の建物に住われていました。2階にはご夫妻にはそれぞれの部屋、お子様には男女別の居室と浴室などの設備があります。
鳩彦殿下居間と寝室の照明器具
朝香宮鳩彦殿下の居間は居室の中で唯一、アンリ・ラパンがデザインした部屋です。
居間はヴォールト天井(かまぼこ型)で、天井に小ぶりなペンダント照明と壁に間接照明が設置されています。
妃殿下居間と寝室
允子妃殿下の居室は居間と寝室で雰囲気が異なっています。照明器具もそれぞれ個性がありますね。
若宮居間と寝室
今で言う長男、若宮の部屋はスクエア型のシンプルでスッキリしたデザインの照明器具です。
天井は石膏塗りですが、切り絵のような飾りは通気口を兼ねていて、他の居間や小部屋にこの通気口が見られます。
姫宮居間と寝室
姫宮の照明器具は円形がベースになっています。女性らしい雰囲気のするデザインです。乳白色のガラスも厚みや風合いが異なります。これは用途に合わせて光の通過量を考慮していたためとのことです。細かい配慮ですね。
その他の居室の照明器具
合の間、書斎の照明器具
合の間は若宮の居間と寝室の間にある部屋です。この部屋の照明器具は、チェーンのような吊り下げ部分と輪が組み合わさったようなデザインです。次の間のような部屋にも手抜きなしです。
通路などのパブリックスペースの照明器具
朝香宮邸でも珍しくカラフルなインテリアは姫宮寝室前の照明です。良い家柄のですが、この照明器具のデザインを選ばれたのはお嬢様たちでしょうか?妃殿下でしょうか?女の子の遊び心を感じてほほえましいです。
通路や小ホールにもペンダントタイプの照明器具が配置されています。
アール・デコ装飾のための間接照明
このほか、あえて間接照明にしてインテリアを際立たせている部屋があります。
まずは次の間の香水塔、庭園美術館の記事に毎回出てきますね!
アンリ・ラパンの部屋=小客室も4面の壁紙が絵画作品なので、ペンダントではなく間接照明です。
殿下の書斎もアンリ・ラパンのデザインで、ガラスの天板のデスクもそうです。この部屋は1925年にフランスで開催され、朝香宮夫妻も見学された、アール・デコ博覧会に出品された「大使の執務室」に源泉があります。
アート作品がある部屋に照明器具を重ねない配慮がすばらしいなと思います。
朝香宮邸は1歩足を踏み入れた瞬間から古き良き時代にタイムスリップできる美術館です。
建物全体がアール・デコの芸術品という空間の中で、照明器具もアートとして輝きを放っています。
東京都庭園美術館について
- 所在地:東京都港区白金台5丁目21−9
- 交通:JR・地下鉄目黒駅・徒歩10分
- ロッカー:あり:コイン戻り式 ¥100(¥100コインお持ちください)
- 写真撮影:建物公開の企画展は可能
- 一般駐車場なし
- 休館日はウェブサイトのカレンダーでご確認下さい。
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