「ヨーロッパ切手」とは、ヨーロッパで発行される切手のことなの?
外国切手通の方にとっては馴染みの「ヨーロッパ切手」ですが、これまで意外と資料は少なかったです。
今日はヨーロッパ切手についてご紹介します!
ヨーロッパ切手とは
ヨーロッパ切手とは?
ヨーロッパの郵便に関連する団体の加盟国から、統一テーマで発行される切手の総称です。
はじまりは1952年にフランスの呼びかけで結成された「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」に遡ります。
ECSCの統合から4年後の1956年9月15日、成果を記念して加盟国から同じデザイン(統一デザイン)の切手が発行されました。
1956年の加盟国は、フランス、西ドイツ(当時)、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6ヶ国です。
1959年に欧州郵便電気通信主官庁会議 (CEPT=European Conference of Postal and Telecommunications Administrations)が結成されると、翌1960年からは、この「CEPT」を母体として「ヨーロッパ切手」が発行されました。
2000年以降は欧州郵便組織(ポステュロプ PostEurop)に引き継がれ、現在まで続いています。
1973年までは統一図案(デザイン)、1974年以降は統一テーマのみ設定し自由なデザインで発行されています。
欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)から発行された切手のため、「デリック(石油掘削のためのやぐらのこと)」がモチーフに使われました。
EUROPEのロゴをデリックでしっかり支えた図案はヨーロッパの協調を表現しています。
ECSCはのちのEC(欧州連合)への流れの始まりと言われています。
ヨーロッパ切手は「ヨーロッパの協調」がコンセプトの切手です。
1956年〜1973年・ヨーロッパ切手・ 統一デザインの時代
1956年〜統一デザイン時代のヨーロッパ切手のデザインです。
1957年は自由なデザインで発行されましたが、翌年から再び統一デザインに戻っています。
1959年にCEPTが結成された翌年の1960年以降はCEPTの文字やロゴが入るようになりました。
ヨーロッパ切手は暖色系と寒色系など反対色を使った2枚セットが多いです。これも協調を表現しているのかと想像します。
基本は統一デザインでしたが、独自のセンスを加えている国もありました。
こちらは1961年のデザインです。
左下のスペインが基本形ですが、イギリスは女王の肖像、リヒテンシュタインとモナコは統一デザインとはかなる違うイメージに見えます。
1974年〜1984年・ヨーロッパ切手・ 統一テーマ
1974年からは統一のテーマをCEPTが決めて、デザインは各国がオリジナルで作成するようになりました。
1956 – 1973 | 共通デザイン(1957を除く) | |
1974 | 彫刻 | Sculpture |
1975 | 絵画 | The Painters Art |
1976 | 工芸品 | Arts and Handcraft |
1977 | 風景 | Landscapes |
1978 | 歴史的建物 | Monumental Buildings |
1979 | 郵便と電話の歴史 | History of Posts and Telecomunications |
1980 | 著名人 | Famous Persons |
1981 | 民間伝承 | Forklore |
1982 | 歴史的出来事 | Historical Events |
1983 | 電磁場の発見 | Great Achivements |
1984 | CEPT25周年・共通デザイン | Anniversary of CEPT |
1984年にCEPT結成25年を記念して共通デザインが戻ってきました。
橋の上にEUROPEとCEPTのロゴがデザインされています。
1985年〜1999年・ヨーロッパ切手のテーマ
1985 | ヨーロッパの音楽年 | European Music Year |
1986 | 自然と環境保護 | Protection of Nature and Enviroment |
1987 | 近代建築 | Modern Archtecture |
1988 | 輸送と通信 | Transport and Communication |
1989 | 子どもの遊び | Toys |
1990 | 郵便局の建物 | Post Office Buildings |
1991 | ヨーロッパと宇宙 | Europe in Space |
1992 | アメリカ大陸発見500年 | The Discovery of America |
1993 | 現代美術 | Contemporary Art |
1994 | 発明 | Discoveries |
1995 | 平和と自由 | Peace and LIberty |
1996 | 有名な女性 | Famous Women |
1997 | 物語と伝説 | Stories and Legends |
1998 | カーニバル | National Festivals |
1999 | 国立公園 | National Parks |
各国がオリジナルデザインになってからは、バラエティ豊かな切手が発行されるようになりました。
1989年のテーマは「Toys こどもの遊び」ですが、それぞれ個性があって楽しいです。
ここでイギリスのヨーロッパ切手「Toys こどもの遊び」に注目します。
1980年代のイギリス切手は4〜5枚セットが中心でした。
各国のヨーロッパ切手は2枚セットが多いですが、イギリスはマイペースを崩さず4枚セットで発行しています。
いつもどおり年代や国名の表記もないのですが、女王の肖像の下にCEPTのマークを入れてヨーロッパ切手に参加しています。
イギリスの切手の表記が特例扱いなことについてはこちらの投稿をご覧ください。
1989年のベルリンの壁崩壊と1991年のソ連崩壊は、ヨーロッパ切手にも大きな影響を及ぼしました。
1990年の加盟国は34ヶ国でしたが、1996年には50ヶ国にまで増え、そのうち15ヶ国は東欧の国です。
1996年のテーマ「著名な女性」は各国の代表的な女性が切手になり、画期的なテーマだったと思います。
2000年〜ヨーロッパ切手のテーマ
2000 | 統一デザイン | Europe 2000 |
2001 | 水と豊かな自然 | Water |
2002 | サーカス | Circus |
2003 | ポスターアート | Poster Art |
2004 | バカンス | Tourism |
2005 | 美食 | Gastronomi |
2006 | 共生 | Symbiosis |
2007 | スカウト | Scout |
2008 | 手紙 | Letter |
2009 | 天文 | Astronomy |
2010 | 児童書 | Children’s books |
2011 | 森林 | Forest |
2012 | 観光 | Sightseeing |
2013 | 郵便車 | Mail car |
2014 | 音楽 | Music |
2015 | 昔のおもちゃ | Old toys |
2016 | エコロジー | Ecology |
2017 | 城 | Castle |
2018 | 橋 | Bridge |
2019 | 国鳥 | National bird |
2020 | 昔の郵便ルート | Old postal route |
2021 | 絶滅危惧種 | Endangered species |
2022 | 物語と神話 | Stories and myths |
2023 | 平和 – 人類の最高の価値 | Peace |
2024 | 水中の動植物 | Underwater fauna and flora |
2000年はミレニアムイヤーでしたので、星と子どもの統一デザインが採用されました。
そして2000年以降は欧州郵便組織(ポステュロプ PostEurop)がヨーロッパ切手のテーマ作成を決めることになりました。
EUROPA切手の新しいロゴもデザインされました。
21世紀のヨーロッパ切手は、2001年「水と豊かな自然」、2002年「サーカス」、2003年「ポスターアート」2005年「美食」など、地球環境に配慮したテーマや、親しみやすく楽しいテーマが設定されるようになりました。
2003年「ポスターアート」はそれぞれの国のデザイナーが参加した秀逸デザインの切手が多く発行されました。
ポルトガルやハンガリーなどは小型シートも展開していてさらに楽しめます。
2013年のテーマは「郵便車」。
それぞれにユニークなデザインの郵便車があり、集める楽しさがあります。
2023年のテーマは平和 – 人類の最高の価値
2023年のヨーロッパ切手は当初の予定だった『水中の動物相と植物相』が延期になりました。
ウクライナ郵政がPostEuropに対してテーマを『平和-人類の最高の価値』にしてはと提案し、2022年4月の理事会で承認され決定しました。
PostEurop は各加盟国から平和をテーマにした統一デザインを募集し、ルクセンブルクの『ピースノット』が投票で選ばれました。
『ピースノット』はケルトの愛の結び目にインスピレーションを得て、生命の象徴であるハートと、国家、文化、願望と多様性の象徴である虹の色で平和を表現しています。
こちらのスイスのように、自国でデザインした切手をセットにしている国もあります。
平和を願う気持ちは世界共通です。切手を通じて心を合わせようというイベントで、郵趣は世界に繋がっていると感じることができるのもヨーロッパ切手の楽しみですね。
1956年に6ヶ国でスタートしてヨーロッパ切手、2024年はポステュロプ (PostEurop)に55ヶ国が加盟しています。
ヨーロッパ切手は多くが春から夏にかけて発行されますので、毎年楽しみです。
2024年のポステュロプ (PostEurop)はこちらの55カ国です。
ポスティオ・マルシェではオープン当初よりヨーロッパ切手を販売しています。
今後も追加していきますので、ぜひご覧ください。
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